市民と進める植物相調査:令和7年度の新発見!
当館の植物分野の調査の一つに、当館ボランティアをはじめ市民の皆さまとともに標本を採集しながらの植物相調査があります。その成果は博物館の研究報告等で発表するとともに、展示にも反映されます。ここでは、令和7年度(2025年4月~2026年3月)に発表した三浦半島初記録や神奈川県初記録などを含む植物8種を紹介します。
■三浦半島初記録の外来植物
・ニセカラクサケマン(ケシ科)
地中海地方原産で、県内では2003年に相模原市で初めて記録されました。当館ボランティアが2022年に鎌倉市由比ガ浜、2023年に鎌倉市大船駅前で発見・採集しました。由比ガ浜では現在も生育が確認されています。
【文献】山本 薫・中山博子2025. 鎌倉市で確認されたニセカラクサケマン (ケシ科). Flora Kanagawa, (96): 1148.
・コゴメミズ(イラクサ科)
南アメリカ原産、国内では沖縄や九州に多く分布し、「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」の「重点対策外来種」に区分されています。県内では1998年と2016年に海老名市で採集された標本記録があります。2025年に市民の方が横須賀市平成町で発見しました。分布は広がっていないようですが現在も生育が確認されています。
【文献】池田隆一・石橋美春・山本 薫2026. 外来種コゴメミズ (イラクサ科)を横須賀市で確認. 横須賀市博研報(自然), (73): 37.
・ニシノオオアカウキクサ(サンショウモ科)
南アメリカ原産の浮遊性のシダ植物で、県内では2013年に小田原市で初めて記録されています。2025年に当館ボランティアが横須賀市光の丘水辺公園で発見・採集しました。近縁種と識別するため、博物館で顕微鏡観察をし、同定しました。現地では駆除をしていますが、現在も見られるようです。
【文献】山本 薫・石橋美春2026.三浦半島初記録のニシノオオアカウキクサ (サンショウモ科). Flora Kanagawa, (97): 1156-1157
・ベニニガナ(キク科)
インド原産の園芸植物で、県内では相模原市での逸出が2018年に報告されているのみでした。2024年に市民の方が横須賀市秋谷で撮影、2025年に当館ボランティアが横須賀市野比で採集しました。
【文献】山本 薫・石橋美春・冨高みち子2026.三浦半島初記録のベニニガナ (キク科). Flora Kanagawa, (97): 1156
■三浦半島では発見例が少ない外来植物
・オヒゲシバ(イネ科)
熱帯アメリカ原産で、神奈川、千葉、三重、兵庫、岡山、熊本などの各県で記録があります。国内では戦前(1945年以前)から、神奈川県では1958年には記録があり、1980年代以降は県内の相模原市、座間市、横浜市、海老名市、藤沢市で確認されていました。2024年に横須賀市佐島で市民の方が発見しました。三浦半島では2001年に三浦海岸駅で発見されて以来、2例目になります。現在も、少ないながらも現地で確認されています。
【文献】山本 薫・冨高みち子・関口克己・中山博子2025. 横須賀市で発見されたオヒゲシバ (イネ科). Flora Kanagawa, (96): 1150.
■三浦半島再発見の絶滅危惧植物
・クロカワズスゲ(カヤツリグサ科)
北海道、本州、四国、九州に分布し、海岸や湖畔などの砂質の湿地に生育します。県内では、相模川河口、三浦半島、箱根精進池などに記録がありますが、横須賀市と逗子市では40年以上発見されておらず、神奈川県の準絶滅危惧となっています。2024年、当館ボランティアが40年ぶりに横須賀市で本種を発見しました。
【文献】山本 薫・中山博子・石橋美春2025. 40 年ぶりに横須賀市で発見されたクロカワズスゲ (カヤツリグサ科). Flora Kanagawa, (96): 1149–1150.
■神奈川県の初記録の絶滅危惧植物
・カンラン(ラン科)
本州(東海地方以西)・四国・九州・琉球、韓国(済州島)・台湾・中国(南部)に分布が知られ、常緑広葉樹林下に生育します。花期は11~1月、緑色から紫色の様々な色調の花をつけます。本種は、園芸採取を主な要因として環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠA 類(CR)に選定されています。県内では、1994年と2002年に横須賀市観音崎での記録があるものの、標本や画像はなく、現地での再確認もできていませんでした。当館には2020年11月に当館ボランティアが採集した三浦半島南東部で開花個体の標本があり、これを神奈川県における初めての標本に基づく記録と判断しました。また、2025年と2026年に三浦半島の別の地点で確認しました。
・スルガラン(ラン科)
九州、亜熱帯から熱帯アジア、ニューギニアに分布します。花期は6~10月、淡黄緑色から淡紅紫色に濃色の脈が入る花をつけます。県内での記録はなく、環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠA類(CR)に選定されています。当館には、2012年に三浦半島西部にて採集された標本が収蔵されており、これが神奈川県における初記録と判断しました。2012年以降は10年以上標本が採集されていなかったものの、近年は市民の方の目撃例が増え、2024年に三浦半島南部、2025年に三浦半島西部とそれぞれ三浦半島の異なる地点で開花個体の標本が採集されました。
【文献】山本 薫・佐々木廣海・田村 淳2026. 神奈川県初記録のカンランおよびスルガラン (ラン科). Flora Kanagawa, (97): 1153-1156

今回紹介した植物8種の画像
これら植物8種の報告は、いずれもインターネット上で公開されています。多くの方にご覧いただき、調査や保全、学習などに役立てていただければ幸いです。
また、2026年7月18日(土)から特別展示「国立科学博物館巡回展『未来へつなぐ博物館』」を開催します。博物館では何をどのように「集め、残し、調べ、伝えて」いるのか、そこにどのような人びとが関わっているのかを、国立科学博物館の標本・資料と合わせて紹介します。今回紹介した植物の標本も展示しますので、ぜひご来場ください。(植物担当:山本 薫)
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