開催中特別展の展示物関連のはなし

2026.08.01

7月18日から11月8日まで、国立科学博物館(科博)の巡回展セットと当館の展示物からなる特別展示「未来へつなぐ博物館」を開催しています。科博や当館の体験展示など多数の展示が揃っていることもあって、ありがたいことに好評のようです。特別展の詳細はこちらです↓

https://www.museum.yokosuka.kanagawa.jp/archives/exinfo/107005

 

本特別展は博物館の機能を「集める」「残す」「調べる」「伝える」の4つの側面から紹介し、博物館がどのような活動をして、標本・資料を次世代へ受け継いでいくのかを伝える、というものです。今回は当館の展示物について、今月の「たより」担当の中島(海洋生物担当)が制作した箇所の一部をご紹介します。

 

  • 横須賀市から約100年ぶりに見つかったチャイロシャコ

2026年1月のたより(https://www.museum.yokosuka.kanagawa.jp/archives/nature-history/106582)にて、神奈川県から約1世紀ぶりに再発見されたチャイロシャコという種を紹介しました。ただ、その時点では横須賀市からはこの種を発見できていませんでした。その後、2026年4月に荒崎にてこの種を1個体のみですが発見できました。横須賀市に限ると1927年の論文で秋谷から採集されていたのが最初で最後の記録でしたので、これは横須賀市からはおよそ100年ぶりの発見となりました。今回の特別展ではこの標本を展示しています。また、この種は尾が細かい棘に覆われているという特徴があるのですが、標本だと見にくいです。展示には、私が書いたスケッチの原画も展示しています。

横須賀市で100年ぶりに見つかったチャイロシャコ

 

  • 沖縄にいなかったオキナワシャコ

2025年まで沖縄で博士課程の学生をしていたので、その時の研究の一部を当館の研究報告(2026年3月発行)に書きました。HP上でご覧になれます(https://www.museum.yokosuka.kanagawa.jp/wp/wp-content/uploads/2026/04/s73-2_Nakajima_2026.pdf)。今回はその内容について展示しています。

オキナワシャコOratosquillina perpensaという種について調べたところ、1894年に沖縄で採集されていた標本が、沖縄におけるオキナワシャコの唯一の記録であることが分かりました。しかし私が沖縄島で野外調査をしてきた結果、実際にはOratosquillina inornataという同属の別種が分布しており、オキナワシャコは沖縄から見つかりませんでした。そこで前述の1894年に沖縄で採集されていた標本を探しました。この標本を研究しなおすことで、本当に過去に沖縄から発見されていたのがオキナワシャコだったのかを再検討できるためです。そして東京大学総合研究博物館に収蔵されていたものがそれに該当することを突き止め、再調査したところ、やはりそれはO. inornataでした。つまりオキナワシャコはこれまで沖縄から見つかっていなかったのです。ただし、大阪湾など他の海域からオキナワシャコは報告されており、それらの同定は正しいと判断できる状況でした。このため、真に沖縄に産するO. inornataには新しい和名シンオキナワシャコを提唱しました。今回の展示では、オキナワシャコとシンオキナワシャコの両方の標本を見ることができます。

沖縄島で採集したシンオキナワシャコ

 

  • ウミウシ模型とクリアファイル

ウミウシ類はそのカラフルさやフリフリした造形などから非常に人気の高い海洋生物です。ただウミウシ類を人気たらしめる多様な色彩や模様、造形を標本に残すのは困難です。標本にすると縮んで形が変わり、色が抜けてしまうためです。また、そもそも体が小さすぎてよく見えない場合もあります。そのため、ウミウシ類の標本そのものはあまり展示には向いていません。当館では私の前任の萩原元学芸員が天神島臨海自然教育園でウミウシ類の調査研究を継続的に行うとともに、ウミウシ拡大模型を紙粘土などで作成し、展示に利用してきました。私はウミウシ類について勉強中の身ですが、生時のウミウシ類の美しさを伝えるべく、今回の特別展に際して我々はウミウシ類のクリアファイルを作成しました(博物館本館と天神島臨海自然教育園の受付にて販売中です)。もちろん、自分で撮影した写真をもとに作成しています。今回の特別展では、前任者作成の拡大標本と共に展示しています。実際に色の抜けてしまった標本も共に展示しているので、ぜひ見比べてみてください。

特別展におけるウミウシ展示の様子

 

以上、「未来へつなぐ博物館」の展示物について、自身が担当した部分のちょっとした補足内容をお届けしました。他にも科博や市博の体験展示など数多くの展示がございますので、よろしければご覧いただけましたら幸いです。そして、博物館や学芸員の活動の内容やその重要性についてご理解いただき、今後とも博物館をご利用いただけましたら幸甚です。(海洋生物学担当:中島)

 

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