三浦半島のインジェクタイト(砕屑性貫入岩)
三浦半島南部に分布する新生代新第三紀中新世~鮮新世の地層である三浦層群三崎層は、スコリア凝灰岩と泥岩の互層からなります。さまざまな堆積構造・地質構造が観察でき、地層観察に適した地層です。
三浦市浜諸磯周辺の三崎層では、スコリア凝灰岩の中に、泥岩または泥岩凝灰岩互層からなる大小のブロックが取り囲まれている様子が観察されます(図1)。周囲の整然とした地層とは明らかに異なることから、かつては「乱堆積層」と呼ばれました。現在では、いったん堆積したスコリア凝灰岩が未固結のうちに液状化し、液状化しにくい泥岩や泥岩凝灰岩互層をブロックとして取り込みながら、周辺地層の割れ目に貫入して形成されたインジェクタイト(砕屑性貫入岩)と考えられています。液状化によって形成されたインジェクタイトのうち、周囲の層理面に垂直に貫入するものはダイク(図2)、層理面に平行なものはシル、周囲の地層をドーム状に押し上げるものはラコリス(図3)といい、貫入形態の違いとして区別されます(図4)。

図1.インジェクタイト.三浦市浜諸磯,三浦層群三崎層.

図2.ダイク.三浦市浜諸磯,三浦層群三崎層.

図3.ラコリス.三浦市浜諸磯,三浦層群三崎層.

図4.インジェクタイトの区分.
通常、未固結の地層は、砂粒や礫が互いに接して支え合うことで強度を保っています。ところが地震などの揺れを受けると、粒子間の水が押し出され、間隙水圧が上昇します。その結果、粒子同士の接触が弱まり、砂が水とともに流動できる状態になります。これが液状化です。
三浦半島では、三浦市浜諸磯や油壺の三崎層に加え、横須賀市天神島の三浦層群(図5)、葉山町森戸磯の葉山層群(図6)でもインジェクタイトを観察できます。これらは、三浦半島の地層が海底で形成されたのち、多くの地震の影響を受けながらつくられてきたことを示しています。(地球科学担当:柴田)

図5.インジェクタイト.横須賀市天神島,三浦層群.

図6.ダイク.液状化した砂が泥岩に貫入している.葉山町森戸磯,葉山層群.
参考文献
神奈川地学ハイキング編集委員会[編] 印刷中. 神奈川地学ハイキング. 築地書館.
日本堆積学会[監修] 伊藤 慎 [総編集] 2022. フィールドマニュアル図説堆積構造の世界. 210ページ. 朝倉書店.
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