夏鳥・旅鳥の観察【学芸員自然と歴史のたより】

 野生の鳥、いわゆる野鳥の中には季節によってくらす場所を大きく移動するものがいて、これを「渡り鳥」と呼びます。「渡り鳥」には、越冬のために北方からやってくる「冬鳥」、夏に繁殖のために南方からやってくる「夏鳥」、北方の繁殖地と南方の越冬地を行き来する途中に立ち寄る「旅鳥」などがあります。「冬鳥」については「冬鳥観察のすすめ」で紹介しましたので、今回は「夏鳥」と「旅鳥」について紹介します。

 まず夏鳥の代表といえばツバメです。ツバメは三浦半島には3月末頃から琉球列島から東南アジアにかけての越冬地から飛来し、つがいとなって巣づくりをはじめます。繁殖は春から夏に1~2回産卵し、子育てを終えた秋になるとまた越冬地へと旅立ちます。同じツバメのなかまとしては、やや大型で腰の部分が赤みがかった色をしているコシアカツバメ、尾が短く腰の部分が白いイワツバメなども飛来しますが、数はとても少なくなっています。ほかに三浦半島の夏鳥としては、長い尾羽をもち、さえずりが「ツキ、ヒ、ホシ(月・日・星=三光=サンコウの由来)」と聞こえるサンコウチョウ、姿も鳴き声も美しいオオルリ、腹部の橙色~黄色のグラデーションが美しいキビタキなどが森の中に現れます。

オオルリ

 

 旅鳥の代表といえばシギのなかまです。シギのなかまの大部分は、春と秋の2回、シベリアなど北方の繁殖地と、東南アジアなどの南方の越冬地を行き来する途中に三浦半島に立ち寄り、休息と栄養補給をしていきます。干潟や磯浜はシギのなかまを観察するのによい場所で、下向きにカーブした長いくちばしをもつチュウシャクシギ、まっすぐな長いくちばしと黄色い足をもつキアシシギ、シギとしては短いくちばしと「よだれ掛け」のような黒いもようが特徴のキョウジョシギ、腹の部分が黒いハマシギなどが潮の引いた海岸でえさを探すようすが観察できます。

 

長井・富浦海岸のチュウシャクシギ

 

天神島のキョウジョシギ

 

 旅鳥の中には変わった旅をする鳥もいます。ハシボソミズナギドリは繁殖地のオーストラリア南部の島から東南アジアを経て、春から夏に三浦半島の沖合いに大きな群れをつくって姿を見せます。やがて秋になると群れは北アメリカ沿岸に移動し、その後太平洋を横切って再び繁殖地のオーストラリア南部へと帰りますが、その移動距離は32,000kmに達すると言われています。ハシボソミズナギドリは、なぜこんな長旅をするのでしょうか。その秘密はえさにあります。ハシボソミズナギドリの主食はオキアミというプランクトン生活を送る甲殻類ですが、その発生場所は季節によって異なります。ハシボソミズナギドリはオキアミが大量に発生する場所を追って太平洋を周回するような長旅をするのです。(海洋生物学担当:萩原)

ハシボソミズナギドリ

 

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