横須賀周辺では、渡り鳥のうち越冬のために飛来する「冬鳥」が種類、飛来数ともに夏に繁殖のため飛来する「夏鳥」より圧倒的に多くなっています。これは多くの場合、横須賀が温暖な気候にめぐまれていることに起因しているもので、カモ類、カモメ類、ツグミ類の多くは北方の繁殖地から越冬に適した温暖な地を求めて飛来することが知られています。今回は横須賀にやってくる代表的な冬鳥について紹介しましょう。
まずは水鳥の代表ともいえるカモ類です。横須賀ではカルガモを除くすべてのカモ類が冬鳥として飛来しています。特に多くのカモが見られるのは、長井地区にある市内最大の溜池である轡堰(くつわぜき)です。毎年、オナガガモ、ヒドリガモを中心に、マガモ、コガモ、キンクロハジロ、スズガモ、ホシハジロなどが観察でき、まれにオカヨシガモも観察できます。
オカヨシガモの雄(左)と雌(右)
海岸でみられるカモメ類も横須賀では繁殖しておらず、おもな繁殖地は北方にあります。横須賀で夏場に見られるカモメ類はほとんどがウミネコで、まだ繁殖に参加しない若い鳥が横須賀に居残っているものです。冬になると繁殖を終えたウミネコの親鳥をはじめ、ユリカモメ、セグロカモメ、オオセグロカモメなど多くの種類が飛来し、海岸がにぎやかになります。カモメ類の中には「カモメ」という種類もいますが、横須賀に飛来する数は多くなく、ウミネコやユリカモメの群れの中にまれに見つかる程度です。カモメは神奈川県の鳥に指定されていますが、これはカモメという種を指すものではなく、カモメ類全体を指しているものだそうです。
ウミネコ
森や農地にはツグミ類がやってきます。ツグミ類も海岸や市街地でよく見かけるようになったイソヒヨドリを除き、ほとんど冬鳥として飛来します。森の中ではシロハラやトラツグミ、農地や公園などでは地表に降りたツグミ、アカハラ、木の枝にはジョウビタキなどが見られます。冬は森の木が落葉して見通しがよくなったり、農地も収穫を終えて広々としていたりすることが多いので、野鳥観察に適した季節です。冬は寒くて部屋にこもりがちですが、コロナ禍の中、新鮮な空気を吸いながら双眼鏡をもって冬鳥観察をしてみてはいかがでしょう。(海洋生物学担当 萩原)
トラツグミ
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