福徳岡ノ場の軽石【学芸員自然と歴史のたより】

 軽石とは、火山から放出された火山砕屑物のうち、スカスカで白っぽいものを言います。2021年8月13日、小笠原諸島の海底火山である福徳岡ノ場が噴火し、大量の軽石が放出されました。軽石は黒潮反流に流されて10月中旬に沖縄県に漂着して大きなニュースとなりました。その後、軽石はさらに黒潮に流されて本州太平洋岸にも漂着すると予想されていました(図1)。

 

図1 福徳岡ノ場の位置と黒潮.黒潮の流路は2021年12月9日の海況で,海洋速報第231号に基づく.

 

 横須賀市自然・人文博物館では、2021年11月下旬から付属の天神島臨海自然教育園で漂着する軽石の採集を始めました。福徳岡ノ場由来の軽石は粗面岩というめずらしい岩石であることが分かっています。採集した軽石を総合地球環境学研究所の新城竜一教授に分析していただいたところ、天神島で12月3日に採集された軽石は流紋岩、12月5日と12月7日に採集された軽石は粗面岩であることがわかりました(図2)。つまり、天神島には12月4日~5日ごろから福徳岡ノ場由来の軽石が漂着していたことになります。福徳岡ノ場由来の軽石は灰色で、黒色の岩片や鉱物を含むためチョコチップクッキーのように見えることが特徴です(図3)。軽石は2022年5月現在でも断続的に天神島に漂着しています。幸運なことに、これまでに漁業や航路への被害はありません。

図2 天神島で採集した軽石の分析結果.提供:新城竜一教授 (総合地球環境学研究所)

 

図3 福徳岡ノ場由来の軽石.天神島臨海自然教育園にて2022年2月18日採集.

 

 天神島で採集した軽石は博物館本館のトピックス展示「三浦半島の漂着軽石」で7月3日(日)まで展示しています。また、天神島以外の海岸でも福徳岡ノ場由来の軽石が見つかるかもしれません。ぜひチョコチップクッキーのように見える軽石を探してみてください。(地球科学担当:柴田)

 

 

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