ツバメの巣づくり【学芸員自然と歴史のたより】

 春から夏に南方から繁殖のためにやってくる渡り鳥「夏鳥」のうち、もっとも身近なものとしてツバメがいます。最近の三浦半島では、ツバメは3月中旬くらいから見られるようになり、4月上旬から中旬に巣づくりをはじめます。

 ツバメは、元々は岩山の崖地や洞窟などに巣をつくっていたものが、人が街をつくって生活するようになると、人の生活圏を上手に利用して巣づくりをするようになったと考えられ、現在では人のつくった建物や橋などの構造物以外では見られなくなっています。市街地では、ツバメの天敵であるタカやハヤブサなどの猛禽類に襲われる危険も少なく、人家に巣をつくることで、人が巣を襲う他の鳥や小動物などを追い払ってくれるというメリットがあるからです。

 

巣づくりするツバメ

 

 ツバメの巣は、泥と枯れ草などの植物の繊維を混ぜ合わせてつくりますが、泥を材料に巣づくりをする鳥は大変めずらしいと言われています。巣づくりの時期のツバメは、オス・メスのペア(つがい)が協力して、空き地や公園の水たまり、土手などの泥を口に含んで持ち帰り、人家の軒先などに泥をはり付けて巣づくりします。

 

泥を集めに地上に降りたツバメ

 

 ツバメは巣が完成すると、メスのツバメは1日に1個ずつ、長径2cm弱の卵を5~7個産みます。卵は親ツバメが温めはじめて18日でふ化しますが、このまま卵を温めると、同じ巣の中の卵がふ化する日が1週間程度ずれてしまうため、親ツバメは最初のうちは卵を温めないことで、ふ化する日を調整することが知られています。産卵は4月から7月に行われますが、早くに産卵したペアは、1シーズンに2回産卵を行うことがあります。

 

巣の中のヒナ

 

 古くから人はツバメを「客を呼び込む縁起物」として歓迎し、ツバメは人を巣のガードマンとして、互いに信頼関係をむすんできました。しかし、最近は事情が変わってきているようです。コンクリートにおおわれた都市化が進むことで、巣の材料となる泥が集められる場所が少なくなり、人の生活圏が必ずしも巣づくりに適した場所ではなくなってきています。また、人が巣の下に落されるひな鳥の「ふん」を嫌って、つくりはじめた巣を壊してしまうことが増えてきているのです。ツバメに配慮したまちづくりを行って、数百年、数千年の間につちかわれてきた人とツバメの信頼関係を今後も大事にしていきたいものです。(海洋生物学担当:萩原)

 

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