博物館と理科フェス【学芸員自然と歴史のたより】

当博物館では、2017年度から研究発表会「みんなの理科フェスティバル(以下、理科フェス)」という事業を開催しています。「フェスティバル」というと、なんだかお祭り気分のイベントといった、博物館らしくないような印象をもたれるかもしれません。それになぜ「理科」なのでしょう?今回のコラムではその趣旨や経緯についてご説明します。

当博物館の総合案内リーフレット(最新版は2020年2月作成)の「博物館の使命」には、当博物館の6つの目的の一つとして「生涯学習の場と機会を提供する」を挙げています。市民をはじめとした様々な方が地域の自然や歴史を調べた成果を持ち寄って学びあう機会として、当博物館は開館間もない1959年に郷土研究発表会を開催するようになりました(第1図)。1994年には自然科学分野のテーマのみ自然科学研究発表会という名称で開催し、2003年以降は博物館フォーラムという名称も併用しながら開催するようになりました(第2図)。こうした研究発表会は講演会の形式で行っていましたが、2013年度からは市民による横須賀の自然誌(2014年度にポスター展示による市民の自然誌研究、2016年度に自然誌研究成果展とそれぞれ改称)と名称を改め、ポスター形式としたことでより多くの発表者の参加が可能になりました(第3図)。

 

第1図.第1回郷土研究発表会[横須賀市博物館雑報, (7): 12].

 

第2図.2010年度自然科学研究発表会[博物館フォーラム]の様子.

 

第3図.市民による横須賀の自然誌2013[横須賀市博物館報, (61): 24].

 

こうした市民参加の研究発表会は、まさしく先に述べた「生涯学習の場と機会を提供する」事業です。しかし、これまでの形式では発表者のみならず参加者もまたほぼ大人世代が占めていたことから、小中学生や高校生のような子ども世代の参加によって、生涯学習の意義をさらに深めたいと考えました。そこで注目したのは、毎年当博物館で開催していた、小学生の自由研究や発明工作の入選作品の展示事業です。これを研究発表会と組み合わせ、広い会場を使って小学生から大人までの様々な科学的探究活動の成果を一堂に会すことで、来場者が多様な作品や活動を見聞して学びを深め、かつ発表者同士が世代を超えて交流する機会を提供することにしました。大人はもちろんのこと、子どもを含む「みんな」が参加しやすい研究発表会とするため、少々の無理を承知で科学的探究活動を「理科」という言葉に置き換え、お祭り気分の気軽さで立ち寄っていただくために「フェスティバル」という言葉を採用しました(第4図)。

第4図.理科フェスの会場の様子[2018年度].

 理科フェスのキャッチフレーズは「こどもから大人まで、みんなが理科でつながる」です。毎回、当博物館の自然科学分野の担当学芸員が様々な発表者と連携しながら運営しています(第5図:理科フェスで交流する子どもと大人[2017年度])。5回目となる2021年度は2022年1月22日(土)と23日(日)に開催し、会場である横須賀市文化会館3階市民ギャラリーには81件の出展(ポスター、工作等、実験演示、ワークショップ)があり、講演会やパネル展示の会場となった当博物館と合わせて、二日間でのべ2,145人の来場者がありました。今後もこの事業を通して「生涯学習の場と機会を提供」していきたいと思います。(昆虫担当:内舩)

第5図.理科フェスで交流する子どもと大人[2017年度].

 

※理科フェスや博物館に関する参考資料(Webでダウンロードができます)

内舩俊樹 2018. 商店街イベントへの参画による「つながる地域博物館」の試み.第25 回全国科学博物館協議会研究発表大会資料, pp. 21–29.

内舩俊樹 2019. 理科でつながる子どもと大人 ―地域文化の核を目指す「みんなの理科フェスティバル」の取り組み―. 第26回全国科学博物館協議会研究発表大会資料, pp. 139–147.

 

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