横須賀はナウマンゾウの化石が初めて見つかった場所です。今回は世界初のナウマンゾウ化石である、横須賀製鉄所産の下あご化石についてご紹介しましょう。
1867年、横須賀製鉄所(現:米海軍横須賀基地)の建設のため、白仙山を掘削したところゾウの下あご化石が見つかりました。下あご化石は、1871年に大学南校(現:文部科学省、東京大学)に送られ、東京帝国大学(現:東京大学)の教授であり、ナウマンゾウの名前の由来となったドイツ人の地質学者エドムント・ナウマン(1854~1927)によって研究されました。これが世界初のナウマンゾウ化石です。ナウマンは横須賀製鉄所産の下あご化石をインドの化石ゾウであるナルバダゾウと考えました。その後、日本人の古生物学者・地質学者である槙山次郎は、静岡県浜名湖や横須賀のゾウ化石がナルバダゾウと区別できることから、1924年にナウマンゾウを命名しました。
横須賀製鉄所産の下あご化石は東京帝室博物館(現:東京国立博物館)天産部に保管されていましたが、1923年の関東大震災の後に天産部が廃止となり、下あご化石の左側は東京博物館(現:国立科学博物館)、右側は学習院に譲渡されました。学習院の化石は行方不明とされていましたが、学習院中等科・高等科標本室に収蔵されていることが1999年に明らかになりました。
当館ではこれまで、国立科学博物館所蔵の左側の下あご化石のレプリカだけを展示していましたが、今年度、学習院中等科・高等科より右側の下あご化石を借用し、レプリカを作成しました。これによって、レプリカではありますが、左右の下あご化石が約150年ぶりに横須賀でそろいました。左右そろったナウマンゾウの下あご化石のレプリカは、当館2階で展示中です。(地球科学担当:柴田)
横須賀製鉄所産ナウマンゾウの下あご化石.写真はヴェルニー本家資料より.
横須賀製鉄所産ナウマンゾウの下あご化石のレプリカ.本館2階で展示中.
<ナウマンゾウとは>
34万~2万年前に日本に生息していたゾウのなかまで、肩の高さは1.9~2.7 m、アジアゾウやアフリカゾウよりもやや小型でした。34万年前の氷期で海面が下り、ユーラシア大陸からやってきたと考えられています。
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