学芸員自然と歴史のたより「船霊(ふなだま)さまをご存知ですか?」

 船霊さまとは、船大工が船を新造したときに納める神さまのことです。そのご神体は、地域によって様々ですが、男女一対の人形、五穀、銭、サイコロ、女性の毛髪を入れるのが一般的です。船霊さまは、女性の神さまと伝えられることが多く、大漁祈願や航海安全がご神徳とされています。

 しかし現在では、船霊さまをほとんど見ることはありません。その理由として、木造船からFRP(繊維強化プラスチック)船へと船の構造や建造の際の道具や技術が変わってしまったことが挙げられます。また、木造船よりもFRP船は海難に遭うことが少なく(GPSを装備していればなおさら)、漁師のなかで船霊さまに対する信仰心が薄れてしまったとも考えられます。

 このたび、市指定の民俗文化財となった横須賀の職人道具のなかに、佐島の船大工道具があり、木造船を建造するのに使われていました。佐島でFRP漁船が登場したのは、1970年代初めです。実は、佐島の船大工が建造した初期のFRP漁船のなかには、船霊さまが納められていました。

 高度経済成長という世の中の変化、漁船建造技術の変化、漁師の信仰心の変化、どれも同時に起きたわけではありません。人々の心の変化は、一番ゆっくりと進むのかもしれません。(民俗学担当 瀬川)

 

漁船に備え付けられた船霊さま

 

 

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