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横須賀市博物館研究報告(自然科学)

横須賀市博物館研究報告(自然科学)

研究報告(自然)72号、(人文)69号を掲載しました >

研究報告(自然)72号、(人文)69号を掲載しました。 横須賀市博物館研究報告(自然科学)72号 横須賀市博物館研究報告(人文科学)69号

研究報告(自然)71号、(人文)68号を掲載しました >

横須賀市博物館研究報告(自然科学)71号 横須賀市博物館研究報告(人文科学)68号

「絶滅」していなかった!?三浦半島で再発見された植物【学芸員自然と歴史のたより】 >

 約1年前になりますが、2022年3月に2006 年以来の更新となる『神奈川県レッドデータブック2022植物編』が発行されました。神奈川県内に生育する植物各種について、絶滅の危険度を評価し、リスト化されたものがまとめられています。各種の生態・生育状況・存続を脅かす原因等が記されており、地域の多様性保全に役立つ1冊です。自分も執筆を分担したほか、口絵に写真を数点提供しました。  本書に掲載されている植物の中には、三浦半島では身近な植物もあります。例えば、横須賀市の花「ハマオモト」も神奈川県では産地極限を理由に絶滅危惧ⅠB類に指定されています。今回の神奈川県のレッドリストの改定において、新たに「絶滅」と判定されたものは17ありました。いつの間にか数が減ったり、姿を消したりしてしまうことがあるかもしれません。 ハマオモト(上)ならびにハマボウ(下)(どちらも絶滅危惧ⅠB類)。海岸に自生します。三浦半島に普通にみられるように感じていても、神奈川県内では稀なものが多くあります。  一方、2006年時点で神奈川県では「絶滅」とされていたものが「再発見」された例もあります。そのひとつが「ハイネズ」です。ハイネズ(ヒノキ科)は、海岸の砂地に生育する雌雄異株の常緑低木です。横須賀市では1953年に野比海岸で、三浦市では1963年に毘沙門で採集された個体を最後に確認されていませんでした。2020年6月、県内外の植物を調べている市民の方から連絡を受け、横須賀市野比においてハイネズが生育していることを確認しました。三浦半島において57年ぶりの発見となりました。このハイネズは、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターの敷地内にある海岸林付近に生育していますが、当時は工事車両が出入りしており、遠方から見通せたため、発見に至りました。ハイネズ再発見の情報は2022年3月発行の神奈川県レッドリストに反映され、現在は絶滅危惧ⅠA類となっています。  工事が終了して落ち着いた2022年11月には生育環境調査を行いました。このハイネズはクロマツ林付近の砂丘に叢生しており、複数の枝に果実もみられました(雌雄の両株が存在していると考えられます)。海岸植物も多くみられ、造成された形跡はありませんでした。生育地の様子ならびに、過去に標本が採集された付近に存在していることから、改めてこのハイネズは移入ではなく自生であると判断しました。生育地は前述した施設の管理下にあるため、良好な生育環境が維持されています。今後、工事などで失われないように注意するとともに、種子の播種等による域外保全も検討しています。 ハイネズ  三浦半島では絶滅したとされていた「タキミシダ」も、2019年に31年ぶりに森戸川で再発見しています。三浦半島のタキミシダは、1988年に森戸川で確認されており、それも岩上で一株見出されただけでした。少なくとも2001年には岩の崩落によって消滅したとされていました。タキミシダの再発見は、森戸川でカエルの調査をしてた大学院生が、「あまり見ないシダ植物だ」とのことで、同定依頼のため博物館に持ちこんだことがきっかけです。その後、2019年2月に現地で個体数や生育状況の確認をし、標本を採集しました。100株以上の生育を確認することができたものの、分布の北限に近いためか、個体サイズは小さく、胞子がついた葉は見られませんでした。個体や生育環境の保全については今後検討する必要があります。現在、神奈川県内では、森戸川のほか小田原と丹沢において生育が確認されており、絶滅危惧ⅠB類に指定されています。 タキミシダ  過去の植物の記録は全て標本情報に基づいています。実物である標本は、当時の自然を伝える証拠となります。貴重な標本資料を後世に残し伝えていくことは、博物館の大きな役目です。また、絶滅とされていた種の再発見は、いずれも市民の方の協力なくしてはありませんでした。地域の自然を見つめる方々の存在とつながりながら、情報を蓄積していく博物館が機能してくことで、今後も新たな発見につながることが期待されます。  現在、博物館では企画展示「牧野富太郎が見つめた植物 -植物標本が語るもの-」を開催しております。4月からの朝ドラのモデルでもある牧野博士の神奈川県産の標本を多数展示しています。この機会にぜひご覧ください。(植物学担当:山本) 参考 『神奈川県レッドデータブック2022植物編』. 神奈川県環境農政局緑政部自然環境保全課・神奈川県立生命の星・地球博物館編. 神奈川県発行.2022年3月. 『31年振りに発見された三浦半島産タキミシダ』. 山本 薫・岩浪 創. 横須賀市博物館研究報告(自然科学)67号. 2020年3月. 『57年振りに発見された三浦半島産ハイネズJuniperus conferta Parl.(ヒノキ科)』.山本 薫. 横須賀市博物館研究報告(自然科学)70号. 2023年3月. 「学芸員自然と歴史のたより」はメールマガジンでも配信しています。

『カマクラ』の名をつけたキクイムシ【学芸員自然と歴史のたより】 >

 今年3月発行の当博物館研究報告(自然科学) 69号に掲載された報文(内舩・齋藤, 2022)で、日本初記録のキクイムシの一種に「カマクラキクイムシ」の和名をつけました。  和名新称の命名に至った経緯は、2016年に「鎌倉市十二所産甲虫類コレクション(以下、同コレクション)」の寄贈を受けたことにさかのぼります。同コレクションは、横浜市金沢区にお住まいのカミキリモドキ類(昆虫綱コウチュウ目カミキリモドキ科)分類の専門家、秋山秀雄氏によって2010年から2014年までの5年間に自宅近くの鎌倉市十二所で採集された甲虫類(コウチュウ目)65科479種1,783点から構成されます。タマムシ(ヤマトタマムシ)やコクワガタなど比較的大型で目立つ種だけでなく、体長数ミリのベニモンアシナガヒメハナムシ(ヒメハナムシ科)[第1図]やツヤチビキカワムシ(チビキカワムシ科)[第2図]なども収集の対象とし、採集したものはできるだけ標本にしたことにより、一つの地域の甲虫類の顔ぶれ、つまり甲虫相を明らかにするための資料として価値があります。しかも、第1、2図のように体長数ミリの甲虫の脚や触角まで整形している美しい標本群です。前出の秋山氏は、同コレクションを形成しながら2011年から2015年にかけて神奈川虫報という雑誌に採集データを発表しました。博物館では同コレクションの標本データを秋山氏発表の採集データと突き合わせ、登録番号を付したリストを目録として再構成し、全479種の標本写真を撮影し、ナミテントウの斑紋変異1個体を追加した6図版480点の写真とともに、2017年3月に博物館資料集41号として発行しました。翌2018年夏には、同コレクションの標本すべてを特別展示「探検!スズメバチと身近な昆虫の世界」にて初公開しました[第3、4図]。 第1図:ベニモンアシナガヒメハナムシ(YCM-I 35519).資料集41号図版Cより.スケールは1 mm. 第2図:ツヤチビキカワムシ(YCM-I 35932).資料集41号図版Dより.スケールは5 mm. 第3図:2018年度特別展示「探検!スズメバチと身近な昆虫の世界」. 第4図:第3図の展示における鎌倉市十二所産甲虫類コレクション.  同コレクションは分類の難しい多くの種を含むため、秋山氏からは一部の種については再検討が必要とアドバイスをいただきました。そこで、横浜市港北区にお住まいの甲虫類の専門家、齋藤 理氏に協力を仰ぎ同コレクションの再検討を行いました。これにより、一部の標本について別種への変更があったほか、再検討時点で最新の分類情報に沿った科の変更や学名・和名の変更がありました。こうした変更は、同コレクションの目録である資料集41号の正誤表にとどまらず、前出の秋山氏によって発表された一連の採集データにも関わり、さらには日本初記録となる種を含むことが明らかになったことから、当博物館研究報告(自然科学)での公表に向け、前出の齋藤氏と共同で (1) 資料集41号掲載のデータや図の修正および更新情報、(2) 秋山氏発表の採集データにおける学名や和名の修正、(3) 日本初記録や神奈川県初記録の報告、について一報にまとめました。  カマクラキクイムシは、これまで中国、台湾、タイ、ベトナムから記録されていた Cyclorhipidion armiger (Schedl) に対して、日本で初めて見つかった地名(鎌倉市)と、種小名のarmigerが「武器を持つ(武装する)」という意味をもつことから鎌倉武士とをイメージして命名しました[第5図、第6図]。 第5図:カマクラキクイムシ(YCM-I 36783).研究報告(自然科学) 69号42ページ第3図より.スケールは1 mm. 第6図:第5図と同個体を左側面から撮影.  奥野ほか (1977) や平野ほか (2018) などによれば、キクイムシは「木食い虫」、つまり樹木を加害する昆虫の仲間で、コウチュウ目キクイムシ科に属します。日本には約300種、神奈川県からは約90種が知られ、種によって加害する樹種が異なります。近年、三浦半島でも被害が目立つようになったカシノナガキクイムシは近縁のナガキクイムシ科に属していますが、これら2科はしばしばゾウムシ科の2亜科として扱われることもあります。カマクラキクイムシについては、海外の研究でウルシ科植物への食害が記録されているようですが、日本での樹種はまだ不明です。(昆虫学担当:内舩) 参考文献 平野幸彦・秋山秀雄・松原 豊・守屋博文・西川正明・野津 裕・高橋和弘・滝沢春雄・露木繁雄・渡辺 崇, 2018. コウチュウ目Coleoptera. 神奈川県昆虫誌2018, pp. 227–639. 神奈川昆虫談話会, 小田原. 奥野孝雄・田中 寛・木村 裕, 1977. 原色樹木病害虫図鑑. 365pp. 保育社, 大阪. 内舩俊樹・齋藤 理, 2022. 横須賀市自然・人文博物館所蔵「鎌倉市十二所産甲虫類コレクション」の再検討. 横須賀市博研報(自然), (69): 25–42. 「学芸員自然と歴史のたより」はメールマガジンでも配信しています。

『横須賀市博物館研究報告』の電子データ(PDF)公開について >

『横須賀市博物館研究報告』を広く活用していただくため、当館ホームページで電子データ(PDF)を順次公開することとしました。ただし、ホームページ上での公開が適切でないと判断される論題や図表、写真等がある場合は、非公開とする場合があります。なお、在庫のある刊行物については、引き続き2階受付窓口にて販売しております。 横須賀市博物館研究報告(自然科学) 横須賀市博物館研究報告(人文科学) 『横須賀市博物館研究報告』は、自然科学と人文科学、それぞれの分野で刊行されてきました。自然科学は1956年に第1号、人文科学は1957年に第1号が刊行され、現在まで続いています。 『横須賀市博物館研究報告』の電子データ公開に伴う著作権(財産権)譲渡に関する告知(お願い)