ドローンを使った地層の調査【学芸員自然と歴史のたより】

 地層や岩石を調べる地質調査は,地層の厚さをメジャーで測ったり,岩石をハンマーでたたいたりして行われてきました。しかし,急な崖など,調べたい地層や岩石に近づけない場合も多くあります。そのような場合は,ドローン (図1) を用いた地質調査が行われるようになってきました。

 

 

図1.ドローン.

 

 地層の調査では,地層を構成する岩石や厚さなどの特徴を柱状に表した地質柱状図が作成されます。ここでは,ドローン撮影 (図2) と,複数視点から撮影された写真を基に撮影物の三次元的な形状を復元するフォトグラメトリーを組み合わせて地層の3-Dデジタルモデル (図3) をつくり,デジタルモデルの観察と計測によって地質柱状図を作成しました。地層の3-Dデジタルモデルでは,緯度経度と標高の情報を与えてスケールを設定することにより,地層の厚さを正確に測ることができます。また,ドローンで撮影した写真から地層を構成する岩石や,地層がつくられたときの様子を表した地層断面の特徴である堆積構造を識別することができます。

 

図2.ドローンで撮影した横須賀市荒崎の三浦層群三崎層.

 

図3. 地層の3-Dデジタルモデルの復元と計測の過程.A: 写真のアラインメントによって算出されたカメラの位置 (青色の長方形) と生成された荒いポイントクラウド.B: 完成した地層の3-Dデジタルモデル.C: デジタルモデル上に示したドローンの操縦場所. D: デジタルモデル上での地層の厚さの計測.いずれの画像もAgisoft Metashape Professionalをキャプチャーしたもの.

 

 地質柱状図を作成したのは神奈川県横須賀市荒崎に露出する中新–鮮新統三浦層群三崎層です (図4)。3-Dデジタルモデルに基づき作成された地質柱状図と,実際に野外での地層観察に基づきつくられた地質柱状図を比較すると,泥岩層と凝灰岩層の区別,それら地層の枚数,地層の厚さは概ね同じ結果が得られました (図5)。また,3-Dデジタルモデルには,平行層理やトラフ型斜交層理 (フォーセット層理) といった堆積構造が記録されました。この方法によって,アクセスが困難な地層においても,信頼できる地質柱状図が作成できると考えられます。

 

図4.A,B: 神奈川県横須賀市荒崎の位置.C: 荒崎における三崎層の調査地.

 

図5.荒崎に露出する三崎層の地質柱状図.A: 野外での地層観察に基づく地質柱状図. B: 地層の3-Dデジタルモデルに基づく地質柱状図.

 

 横須賀市荒崎での調査は,横須賀市建設部公園管理課の許可のもと行いました。ドローンの運用には様々な法令やルールが規定されていますので,ドローンを飛行させる場合には十分ご注意ください。

 

もっと詳しく知りたい方は

柴田健一郎・西田尚央・松川正樹 2024. ドローン撮影とフォトグラメトリーによる地質柱状図の作成. 横須賀市博研報 (自然), (71): 1–12.

 

2024年9月29日掲載

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