世の中には、免許や資格を得て就くことができる職業がいくつもあります。その多くで、実技試験を課したり、実地での研修や経験を積んだりすることを必須としています。例えば、教育実習です。みなさんの小・中・高校時代の記憶のなかで、教育実習生が緊張しながら授業をしていた記憶があるのではないでしょうか。実は博物館の学芸員資格取得にも実習が必要です。多くの博物館では、7月下旬から9月中旬までの期間に実習生を受け入れます。それは、大学生(大学院生・科目等履修生含む)の夏休みに合わせるからで、学芸員資格取得者のほとんどは大学で学芸員課程を履修します(文化庁実施の学芸員資格認定試験で取得する方はごくわずかです)。
今年度、当館は8月20日から30日までが実習期間で、12名の実習生が学芸員の仕事を実地で経験しました。当館は、すべての学芸員の業務を全員経験してもらい、それとは別にグループワークとして実習生に展示を考えてもらいます。ほぼ毎日、違う分野の学芸業務を経験する実習生も大変だと思いますが、我々学芸員も各実習生が大学で学んでいる専門分野が違うなかで教えるのは楽ではありません。
実習の様子(1)
実習の様子(2)
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、教員免許は中学校社会、高校国語のように学校種や教科ごとですが、学芸員資格は民俗学、地学のように専門分野で分けられていません。そのため、実際の学芸員採用時に大学・大学院での専門や業績を吟味することにより専門性を担保します。
さて、当館のグループワークは自然グループ・人文グループに分かれて展示を考えてもらいました。自然グループは、うわまつりなどの地域イベントに博物館が出展する際の展示を考えてもらいました。人文グループは、横須賀市が11月に実施するトイレの日の取組みにあわせた展示を考えてもらいました。実習最終日にその成果を発表し、学芸員から講評を受けて、すべての実習が終了となります。実習生に考えてもらった展示は、学芸員がブラッシュアップしたうえで、10月のうわまつり、11月のトイレの日前後にお披露目する予定です。
グループワーク発表(自然)
グループワーク発表(人文)
当館としては、実習生に上記の展示を残してもらいました。実習生にとっては、学芸業務の経験を得られたわけです。それは形には残らないものですが、毎日毎日その日に学んだことを書き記した実習日誌は残ります。実習生のみなさんが将来学芸員にならなくとも、たまに実習日誌を開いて当館のことを思い出したり、近所の博物館に足を運んだりすることを願っています。(民俗学担当:瀬川)
実習日誌
2024年9月10日掲載
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