学芸員自然と歴史のたより「臨時休館でも博物館の仕事はなくなりません!」

 「新型コロナウィルス」感染拡大防止のため、多くの公共施設が臨時休館をしています。横須賀市自然・人文博物館も例外ではありません(2020年3月29日現在)。そうしたなか、博物館の人たちは何をやってるんだろう?と思われた方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は、そのような疑問に対して、当館の活動をご説明しながらお答えしていきます。

 博物館の仕事は、「資料の収集と保管」、「展示教育」、「調査研究」の大きく3つに分けられます。臨時休館中で、しかも行事を中止している現在は、展示教育活動はかなり縮小しています(この記事も展示教育の活動に入りますし、問合せ対応等も行っておりますのでゼロにはなっていません)。しかし、残る「資料の収集と保管」と「調査研究」の活動は変わりなく行われています。それでは、具体的にどのような活動なのでしょうか。

 まず「資料の収集と保管」について、各分野で違いはありますが、収集した資料を資料室(収蔵庫)に入れられる状態にし、その資料の情報をできるだけ明らかにする作業です。資料室に入れるためには、付着している泥やほこりを落としたり長期保存できるよう処理したりする必要があります。また、「いつ、どこで、だれが、どのように収集したのか」を明らかにし、その資料の分類や収集時に得られた情報も合わせて明記します。

 次に「調査研究」ですが、これは文字通り、資料を調べて研究することです。ただし、その資料についての知識を得ることも含みますが、肝心なのは同類もしくは近似の資料との比較です。自館資料との比較だけでなく、他館や他地域との比較をすることでその資料的価値が見えてくることがあります。例えば私の分野では、秋谷の子産石のような丸石を信仰の対象にし、かつ安産や子宝祈願を内包する事例は横須賀だけではありません(山梨県や宮崎県にも)。そのほかにも、佐島のヘラヘラ団子のように土用の丑の日前後に餡子(あんこ)を食べる風習は、近畿地方に多くあります(アンコロ餅を食べると食当たりしないなど)。横須賀の民俗がどこからやってきたのかを考えるうえで非常に重要な視点です。

 そのほか、学芸員は行事や展示等に関する事務仕事以外に、いろいろな仕事があります。例えば他の博物館や研究者とのつながりを築くのも重要な仕事です。神奈川県内の博物館100館(令和元年度現在)が加盟する神奈川県博物館協会の幹事を当館の学芸員は引き受けていますし、各学芸員が所属する学会の運営に携わることもあります。博物館相互の連携は、円滑な情報交換だけでなく、川崎市市民ミュージアムの水没資料に対するレスキュー活動などでお分かりいただけるように、相互に助け合う関係を築くものです。

 最後に「展示教育」の仕事を補足すると、特別展示や企画展示などで製作するポスターやチラシ、キャプション(案内文や説明文)などを自分で考えることはもちろん、デザインも学芸員が行うことがあります。1年間の活動をまとめた『館報』や「博物館だより」、年間行事リーフレットも学芸員が作成します。さらに、問い合わせへの対応、学校教育への支援も重要な仕事です。学校教育への支援は、教育委員会に属する博物館では根本的な活動の一つです。私が担当する小学校3年社会科「昔のくらしと道具」の単元への授業支援は、例年約35校(横須賀市内には私立も含め47校の小学校があります)が来館し、古民家や昔の道具を見学します(来館できない小学校向けに昔の道具も貸出しています)。また最近では、より多くのみなさまに博物館のことを知っていただこうと、「博物館わくわくたんけんブック」を作り常設展示をより深く知っていただく取り組みや地域の行事に「おでかけ博物館」として参加することもあります。FMブルー湘南の「まなび猫調査隊」という番組(木曜日14時40分~)も図書館・美術館・生涯学習センターと一緒に受け持っています。

 博物館主催だけでなく地域やコミュニティセンター主催の行事が中止・延期になり、市民のみなさまとお会いする機会が減り残念です。一刻も早く事態が収束することを願っています。(民俗学担当:瀬川)

 

企画展示の準備

 

おでかけ博物館

 

古民家見学

 

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