学芸員自然と歴史のたより「JAMSTEC無人探査船による相模湾の深海調査」

 当館では、国立研究開発法人海洋研究開発機構JAMSTECの協力で、「JAMSTEC撮影による日本近海の深海生物パネル展」を2019年1月14日まで開催中です。JAMSTECの海洋研究では、有人潜水調査船「しんかい6500」や地球深部探査船「ちきゅう」などの船が用いられます。当館学芸員も、JAMSTECの調査航海に参加することがあります。

 私は2008年と2010年に相模湾の調査航海に参加しました。この航海はJAMSTEC広報課が主体となり、相模湾周辺の博物館や水族館の職員が参加しました。相模湾の地形地質や深海生物を調査し、その成果を一般の方々に広く紹介することが目的です。名づけてKO-OHO-O (Key Obaservation and Outreaching of the Hidden Ocean and Organisms) の会です。

 2回の航海で用いられたのは3,000m級無人探査機「ハイパードルフィン」とその母船である海洋調査船「なつしま」です。「ハイパードルフィン」は超高感度ハイビジョンカメラや、岩石や生物を採取できるマニピュレータ(ロボットアーム)を備えています。「ハイパードルフィン」の操縦はオペレーターが行い、私たち研究者はモニターに映し出された海底の映像を記録したり、採集された資料の整理や分析を行ったりしました。なお、「なつしま」は2016年に退役となっています。

 

3,000m級無人探査機「ハイパードルフィン」

 

海洋調査船「なつしま」

 

 2008年は初島沖、伊豆熱川沖、小田原沖、相模湾中央部(相模海丘)で、2010年は相模湾中央部(三浦海底谷~相模海丘)、城ケ島沖(東京海底谷)で潜航調査を行いました。2008年の航海では、初島沖の水深1,172 mでシロウリガイ類などからなる化学合成生物群集や、伊豆熱川沖の水深900~1,000 mで海底溶岩流などを確認しました。2010年の三浦海底谷と東京海底谷の潜航では、水深約1,100~600 mで堆積岩の地層や、ウルトラブンブクやナマコのなかまなどの深海生物を観察しました。

 

シロウリガイ類の群集.相模湾西部,初島沖.水深1,172 m.提供:海洋研究開発機構.

 

枕状溶岩.相模湾西部,伊豆熱川沖.水深993 m.提供:海洋研究開発機構.

 

海底の地層.東京海底谷.水深1,154 m.提供:海洋研究開発機構.

 

ウルトラブンブクとナマコのなかま.東京海底谷.水深1,008 m.提供:海洋研究開発機構.

 

 私は通常、陸上の地層を調べたり観察したりしていますが、相模湾の海底の地層や岩石、深海生物は大変興味深いものでした。三浦半島の地層の大部分は深海でつくられたと考えられていて、シロウリガイ類の化石も見つかっています。三浦半島やその周辺地域の地質や生い立ちを理解するために、相模湾の深海の調査はとても大切だと感じました。(地球科学担当:柴田)

 

もっと詳しく知りたい方は

藤岡換太郎ほか 2014. 相模湾の海底地形・地質および生物の目視観察-NT08-21 次航海ハイパードルフィン潜水調査報告-. 神奈川県立博物館研究報告自然科学, (43): 73-97.

柴田健一郎ほか 2015. 三浦海底谷と東京海底谷の海底地形・地質および生物の目視観察 - NT10-15 次航海Leg 3 ハイパードルフィン潜航調査報告 -. 神奈川県立博物館研究報告自然科学, (44): 11-22.

森 慎一ほか 2015. 無人探査機ハイパードルフィンによる相模湾東京海底谷北壁の露頭目視観察. 地質学雑誌, 121(5): 161-166.

 

「学芸員自然と歴史のたより」はメールマガジンでも配信しています。

モバイル端末案内

スマートフォンでQRコードを読み込むことで手軽にアクセスできます。

メールマガジン

展示やイベントなどの博物館情報をメールマガジンでお届けします。
登録はこちら

ダウンロードコーナー

博物館配布の各種PDF・申込書・メールマガジンのバックナンバーをダウンロードできます。
ダウンロードはこちら

関連サイト

ページ上部へ戻る