学芸員自然と歴史のたより「冬が旬、縄文人もカキが好き!」

 冬本番、お鍋を食べて身も心も温まりたい季節です。お肉もいいですが、三方を海に囲まれた三浦半島ならば、やっぱり新鮮な魚介と野菜がマリアージュする海鮮鍋が一番でしょうか。海鮮鍋に使われる魚介といえばシャケ・アンコウ・ホタテ・カキなどが代表格ですが、これらのなかでカキは三浦半島の縄文人によって約一万年も前から採取されていたことが知られています。

 夏島貝塚をはじめ、平坂貝塚・茅山貝塚・吉井貝塚など三浦半島で縄文時代早期に形成された貝塚のいずれからも大量のマガキが出土しています。マガキは現代でもスーパーなどでよく目にする秋から冬にかけて旬を迎える最も身近なカキの一種です。磯や河口付近の岩に付着しているのをよく見かけますが、本来は淡水と海水が混ざりあう汽水域の干潟砂泥のなかで成長します。このことから、縄文時代早期の三浦半島には、栄養豊富な干潟が広がっていたことがわかります。

 調理方法としては、水を張った土器に熱く焼いた石を入れて沸騰させ、そのなかにカキを入れて煮て、火が通り殻が開いたら身をはずしていたと考えられています。そのため、縄文時代早期の遺跡からは大量の焼け石が出土します。膨大な量を採取していることから、煮沸後乾燥させて保存食あるいは交易品に加工していた可能性が高いようです。ただし、海のミルクと呼ばれるほど栄養豊富なカキですから、煮汁を捨てていたとも思えません。他の食材とともに煮込んだカキ鍋、さらには最近ブームの「カキ小屋」よろしく焼きガキに舌鼓を打つ日もあったかもしれません。(考古学担当 稲村)

 

茅山貝塚出土のマガキ

 

縄文時代早期の土器と調理方法

 

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