学芸員自然と歴史のたより「湯、立ちぬ」

 夏が終わり、秋がやってきました。もう少しすれば、鍋料理がおいしい季節です。鍋料理を思い浮かべるのは気が早いかもしれませんが、コトコトと音を立ててお湯がわいた後には、おいしいものが待っているものです。

 お湯がわくということは、いくつかの現象にわけられます。湯気が出て、気泡ができて、音がする。昔の人々は、それらの現象に神秘的な思いを抱いていました。そのひとつが湯立神楽(ゆだてがぐら)です。

 湯立神楽とは、簡単にいえば、わき立つ湯を中心に、神と人とが生まれかわる儀式といえます。旧暦11月(霜月)に行われることが多いので霜月神楽と呼ぶこともあります。旧暦11月は冬至があり、太陽の力が弱まると考えられていて、そこからの復活を湯立に込めました。各地に伝わる湯立神楽の演目は様々ですが、観客も含めて湯を浴びる(振りかけられる)ことはほぼ共通しており、浴びると無病息災になるとされています。湯を浴びてケガレ(日常の疲れ)を払うという発想は、映画『千と千尋の神隠し』で神々が湯治にやってくるという物語の核となっています。

 三浦半島も湯立神楽(鎌倉神楽、湯花神楽、潮神楽とも呼ばれる)が盛んな地域のひとつです。ここで細かな演目について説明するよりも実際に見た方が良いでしょう。神奈川県神社庁(行政機関ではなく、県内の神社の団体)のホームページで各神社の祭礼などを検索できますので、お近くの湯立神楽を探してみてください。検索後に直接神社に問い合わせれば確実な日程がわかります。三浦半島の湯立神楽は一年をとおして各地で行われており、ケガレを払う機会に恵まれているといえます。(民俗学担当 瀬川)

 

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