学芸員自然と歴史のたより「勾玉って何がモデル?」

 小中学生を対象とした夏休み企画のなかで、「古代ネックレスをつくろう」という行事を毎年開催しています。時折、参加者から「勾玉は何をモデルとしているのですか?」と質問されることがあります。熊や猪の牙、胎児、三日月など諸説あるのですが、結論的にいえば答えは「わかりません」なのです。

夏休み企画で作った丁字頭勾玉のネックレス

 

 縄文時代にはその不思議な形から「異形勾玉」と呼ばれるものがあります。弥生時代に入ると、ドーナツを半分に切ったような形の勾玉が出現しますが、これは稲作とともに大陸から伝えられた形と考えられています。その後、頭部が丸く体部が長いお馴染みの形の勾玉が登場し、古墳時代をとおして翡翠や瑪瑙などさまざまな石材で作られます。ただし、丁字頭(ちょうじがしら)と呼ばれる初期の勾玉の頭部には、タコ糸巻きのハムのように、きつく巻いた糸の間に盛り上がり表現がみられることから、オリジナルは比較的軟らかな素材で作られていたと思われます。このように、勾玉と一口に言いますが、実は時代によってモデルやルーツが異なっているようです。

弥生時代の大陸系勾玉

 

 ところで、多くの人がイメージする頭が極端に大きいオタマジャクシのような形は、古代の勾玉にはありません。ではなぜ勾玉がこのような形であると思うようになったかといえば、現代でも目にする機会が多い神社・仏閣などでみられる日本古来の巴紋や、古代中国の道教における陰陽のシンボルマークである太極(タイチー)図などが勾玉の形に似ているためではないでしょうか。(考古学担当 稲村)

三巴(左)と太極図(右)

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