学芸員自然と歴史のたより「野比海岸の地質:活断層と新第三紀の地層」

 横須賀市千駄ヶ崎の西方,県道212号久里浜港線沿いの野比海岸では,活断層である北武断層と,新第三紀の地層が観察できます。

 北武断層は三浦半島を西北西-東南東方向に横断する,活動度A級 (m/1000年のオーダー) の活断層です。1000年~1500年に1回活動すること,最後の活動が1000年~2500年前であったことがわかっているため,近い将来に活動して地震を起こすと考えられています。野比海岸の北武断層は砂浜やコンクリートに覆われていますが,その周辺でははんれい岩,石灰岩,かんらん岩,玄武岩などの転石が見られます。これらは三浦半島ではめずらしい岩石で,北武断層の運動によってもたらされたと考えられます。また,ここでは白色の鉱物脈が入った緑色または褐色の凝灰岩が露出しています。凝灰岩とは火山の噴出物が降り積もって固まった岩石です。分析の結果,この凝灰岩は横須賀市立石の凝灰岩とほぼ同じ鉱物からできていることがわかりました。

 北武断層の北東側には,砂岩と泥岩のきれいなしま模様からなり,北東に70°~90°傾く地層が見られます。三浦層群逗子層と呼ばれ,約600万年前の新第三紀中新世後期に深海でつくられた地層です。

 北武断層の南西側には泥岩からなる葉山層群が露出します。泥岩には小さな断層がたくさん見られ,地層の向きや傾きはさまざまです。微化石である放散虫化石の研究から,1500万~1400万年前の新第三紀中新世中期につくられた地層であることがわかっています。(地球科学担当 柴田)

 

※ここで紹介した内容は,平成28年5月8日(日)の自然観察会「野比海岸の地層」で見学します。

 

もっと詳しく知りたい方は

柴田健一郎・蟹江康光 2016. 横須賀市野比海岸の北武断層破砕帯に露出する暗緑色凝灰岩のX線回折分析. 横須賀市博研報 (自然), (63): 9-15.

(↑本館受付で販売中)

 

野比海岸の北武断層.かんらん岩や石灰岩の転石が見られる.

 

かんらん岩の転石.

 

緑色の凝灰岩.横須賀市立石の凝灰岩に似ている.

 

 

逗子層の砂岩と泥岩.

 

葉山層群の泥岩.

 

 

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